映画「文学賞殺人事件 大いなる助走」を観て。文壇暴露話。ラストは選考委員を次々に殺していく


 1989年に公開された、筒井康隆の小説『大いなる助走』を原作とする悲劇的なコメディ映画です。同人誌作家が文学賞をめざして抱く大いなる野望と陰謀、文壇とそこに巣食う俗物たち(同人、作家、編集者)を徹底的にパロディ化(戯画化)した、痛烈にして猛毒の文壇暴露話です。受賞めざして繰り広げられる駆け引き、陰謀の末の悲劇、「ブンガク」をめぐる狂乱と欺瞞を徹底的にカリカチュアライズして描き、文壇を震撼させました。高度成長期の文学と文壇の巨大化と地域化、その腐敗について描かれた作品です。選考委員が次々に殺されます。

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地方都市・焼畑市の大手企業に勤める市谷京二(佐藤浩市)は、大学教授の妻・時岡玉枝の原稿を拾った事がきっかけで玉枝が所属する小説の同人誌「焼畑文芸」に参加し、玉枝と男女の関係になります。市谷は自分の会社の内幕を暴露した「大企業の群狼」という処女作を書きます。「大企業の群狼」は著名な文学誌に転載され、文学賞「直本賞」の候補になります。しかし自分の勤める会社の内部を暴露したことで解雇され、親からも勘当されてしまいます。東京に上京した市谷は何としても賞を得しようと「直本賞」の受賞請負人である多聞(ポール牧)に、退職金や貯金の全財産500万円を渡します。

「直本賞」の選考委員である6人の小説家の中で、多聞は懐柔できそうな5人を選びます。市谷は男色家の雑上にオカマを掘られ、玉枝を説得して人妻好きの坂氏と関係を持たせ、海牛綿、明日滝、膳上(小松方正)には金銭を渡します。文学界の実情を知った市谷は次第に嫌気がさしてきます。「直本賞」の選考会が始まります。当初は「大企業の群狼」を押す5人の作家たちでしたが、金を受け取った膳上が、自分の最新作に市谷の文章の一部をうっかり使ってしまった事に気がつきます。そこで自分の盗作を目立たせないために、膳上は他の候補作を支持しだします。そのため選考の流れが変わり、市谷は落選します。

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市谷落選の知らせを受けて「焼畑文芸」の同人たちはバンザイと叫びます。やがて、女子高生の同人である徳永美保子が自殺します。徳永は同人で女たらしの大垣の企みに乗って、大垣に処女を捧げて捨てられたのでした。そのため大垣は強制わいせつ罪で逮捕されます。全財産を失い、玉枝も離れ、市谷は東京の安アパートに取り残されます。選考委員たちが発表した無責任な選評に激高した市谷は、選考委員たちを殺すという内容の「大いなる助走」という第二作を執筆して編集者の加茂に送ります。加茂は小説になっていないと否定しますが、市谷は実際に選考委員の全員を散弾銃で殺して回ります。パトカーに追われた市谷は車ごと警察のバリケードに突っ込み即死します。いま「大いなる助走」を売ればベストセラーになると、加茂たちは必死に原稿を探しますが、すでに原稿はシュレッダーにかけられて廃棄処分にされていました。

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どこまで事実なのか分かりませんが(あるいは今とは状況が違うかも知れませんが)同人誌作家と中央文壇の関係がリアルに描かれていて、やるせない気持ちになりました。同人の合評会の醜さ、選考委員の講評のいい加減さや無責任さ、編集者や文壇人の冷酷さが際立ちました。文学に携わる人間たちの曲者揃いにあきれ果てました。特に同人主宰者役の蟹江敬三が哀れでした。しだいに市谷が追い詰められて落ちぶれていくさま、壊れていくさまが退廃的で名演技でした。あとパーティー会場で市谷が土下座したために、全員で土下座仕合う場面も笑えました。自殺者や性犯罪者、はては殺人鬼まで輩出した社会不適合者・反社会的人間の温床のような同人誌の描き方は、酷すぎる気もしました。有名で権威のある賞を取らないと作家に成れない現実にぞっとしました。市谷の最後のセリフ「私怨話でない文学があるんですか?」は筒井康隆の心情が垣間見えて興味深かったです。

ちなみにセックスシーン(男性同士の性行為を含む)やヌードが多いので閲覧注意です☆


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