映画「ゼロの焦点」を観て。松本清張の長編推理小説の映画化。北陸を舞台に妻が夫の過去に遭遇する物語
2009年制作。松本清張の長編推理小説の映画化作品です。主演は広末涼子と中谷美紀です。北陸地方を舞台に、太平洋戦争直後に端を発する時代の傷痕が生んだ連続殺人事件を描きます。松本清張生誕100年記念として制作されました。「点と線」「砂の器」と並ぶ社会派ミステリーの代表作です。

主人公の板根禎子(広末涼子)は26歳。広告代理店に勤める10歳も年上の鵜原憲一(西島秀俊)と見合い結婚をしました。新婚旅行を終えた10日後、憲一は、仕事の引継ぎをしてくると言って金沢へ汽車で旅立ちます。しかし憲一は、予定日を過ぎても帰京しません。禎子が憲一を見たのは、これが最後でした。やがて禎子のもとへ、憲一が北陸で行方不明になったという勤務先からの知らせが入ります。禎子は急遽金沢へ向かいます。憲一の後任である本多の協力を得つつ、憲一の行方を追いますが、憲一の行方はいっこうに分かりません。そのうち能登金剛で憲一の外見に似た滑落死体が上がります。禎子は本多らと共に確認に向かいますが、憲一ではありませんでした。憲一の転居先も分からず、禎子は途方にくれます。そこで禎子と本多は、憲一がひいきにされていた室田耐火煉瓦を訪ねます。受付にはパンパン英語を話す田沼久子がいました。禎子は社長の室田儀作(鹿賀丈史)と妻の佐知子(中谷美紀)に会います。佐知子は日本初の女性市長を誕生させるべく、裏で暗躍していました。

憲一の兄の宗太郎が禎子の元を訪れます。しかし宗太郎は鶴来の加納屋という旅館で青酸カリ入りのウイスキーを飲まされて殺されます。犯人は赤いコートにサングラス・ネッカチーフを着用していました。禎子はいったん東京の阿佐ヶ谷の家に帰京します。禎子は母から、憲一が以前立川署の風紀係で巡査(パンパン狩り)をしていたことを知らされます。やがて禎子のもとへ、田沼久子の家を訪ねた本多が殺されたという知らせが届きます。そして田沼久子は指名手配されます。禎子は再び金沢に行きます。実は自殺した田沼久子の仮の夫・曽根益三郎は、鵜原憲一と同一人物でした。憲一は曽根益三郎として田沼久子と秘密の二重生活をしていたのでした。

実は佐知子と田沼久子は戦後、立川でパンパン(将校のオンリー)をしていたのでした。佐知子はマリー、田沼久子はエミーと呼ばれていました。憲一もパンパン狩りをしていたため、3人は顔見知りでした。再び3人が再会したことが今回の悲劇の原因でした。憲一は佐知子に「新しい時代に生まれ変わりたい」と言います。そこで佐知子は憲一に偽装自殺を勧めます。しかし佐知子は憲一を崖から突き落とします。憲一が佐知子のパンパン時代を知っているからでした。佐知子は田沼久子を匿っていました。佐知子は田沼久子を乗せて能登金剛に向かいます。田沼久子は佐知子に思い出話とお礼を言って、自ら崖から飛び降ります。

佐知子は、憲一と宗太郎と本多の3人を殺していました。田沼久子を死に追いやったショックから、佐知子は狼狽して部屋のガラスを壊して傷だらけ(血まみれ)になります。市長の選挙当日、佐知子の推す女性候補が当選します。しかしすでにパトカーが室田宅に向かっていました。儀作が佐知子の代わりに自白して拳銃自殺を図ります。当選会場で演説する佐知子に向かって、禎子は「マリー」と叫びます。佐知子は狼狽して昏倒します。禎子は佐知子を平手打ちします。佐知子は車で逃走します。禎子は泣き崩れます。一週間後 佐知子の遺体が日本海で発見されます。

事件の背景に、連合国軍占領下の日本で、アメリカ軍将兵相手に売春行為をしていた女性たち(パンパン)の存在があります。彼女らが自身の忌まわしい過去を隠そうとする必死の感情が、作品内で重要な意味を持ちます。そのために連続殺人事件が起きます。
社会派の二大要素である「犯罪の動機」と「社会的背景」がきっちりと描かれているという意味で、数ある清張作品のなかでも、最も社会派らしい作品になっています。この作品で、探偵役は男性の仕事という従来の常識をくつがえし、女性もまた推理作品の主人公(女探偵)になることができるということを立証してみせました。また、能登金剛に象徴される北陸の人と風土を鮮やかに描き出すことによって、推理小説における舞台の重要性を改めて印象づけました。おかげでテレビのミステリードラマのクライマックスは、なぜかいつも断崖の上というお約束まで生み出しました。

また、昭和30年前期の風景を上手く再現していると思いました。雪景色、路面電車、蒸気機関車、車、カメラ、電話機、その他いろいろ、昭和30年前期そのものでした。バックで流れるプラターズの「オンリーユー」がぴったり良く合っていました。BGMも素晴らしく、暗い冬の北陸を演出していました。中谷美紀の迫力の演技が見ものでした☆
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