アニメ映画「時をかける少女」を観て。筒井康隆の有名SF小説のアニメ版。各国の映画祭で多くの賞を受賞
2006年製作のSF青春アニメ映画です。原作は筒井康隆の同名の小説。監督は細田守。原作そのままの映画化ではなくて、原作の出来事から約20年後の世界を描いています。主人公は、原作のヒロインだった芳山和子の姪である紺野真琴で、主人公が繰り広げる青春ストーリーがテーマとなっています。この作品は、各国の映画祭で多くの賞を受賞するなど、高い評価を受けました。紺野真琴を演じた仲里依紗は、4年後の2010年に製作された実写映画版『時をかける少女』でも主演を務めました。

高校2年生の紺野真琴は、医学部を志望している津田功介(親が病院を経営)と、春に転校してきた間宮千昭(やや不良)という2人の男子のクラスメイトと「野球仲間」として親しく付き合っています。ある夏の日、真琴は偶然に立ち寄った理科室で怪しい人影を目撃します。真琴は転んで不思議な空間に入る体験をします。気づいたときには誰もいない室内で倒れていました。この体験を功介と千昭に話したところ、一笑に付されます。2人と別れて帰宅する途中、真琴は自転車のブレーキが壊れていることに気づきます。真琴は下り坂を疾走する自転車を必死で止めようとしますが、自転車は一気に加速して、電車が接近する踏切に入ります。死を覚悟する真琴でしたが、気がつくと坂道の途中で通行人と衝突して転んでいて、時間は少し前まで戻っていました。

訳が分からない真琴は、博物館に勤務している叔母の芳山和子の職場を訪れて、この体験を話しますが、それはタイムリープといって、真琴の年頃の女の子にはよくあることだ、と言われてしまいます。帰宅後、真琴は自分の意思で過去へのタイムリープを試して成功します。調子に乗った真琴は、タイムリープを使って、テストでよい成績を取ったり、家庭科の調理実習で起こったトラブルを別のクラスメイト・高瀬に変えたり、カラオケを10時間も延長し続けたり、ささやかな欲望を満たすために使っていきます。和子から、自分がいい目を見ている分、ほかに悪い目を見ている人がいるのではないか、と忠告されますが、真琴は全く気にしません。

ある日、功介が同じボランティア部の後輩・果穂から告白されます。それをきっかけにして、真琴は千昭から「功介に彼女が出来たら、俺と付き合えば?」と言われます。突然の告白に慌てた真琴は、タイムリープを使って千昭からの告白を「なかったこと」にして、それ以後、千昭を避けるようになります。和子から「せっかく想いを伝えたのに千昭くん可哀想」と言われますが、遊び仲間だった千昭と恋人になることを想像できない真琴は、千昭の気持ちを受け止めることが出来ませんでした。そんな真琴に対して、事情を知らない親友の友梨は、たびたび千昭のことを探ろうとします。ある昼休み、体調が悪いからと言って自分とのランチを断った友梨が、千昭にこっそりお弁当を渡している姿を、真琴は目撃してしまいます。

校庭が騒がしいので真琴が駆けつけると、高瀬が消火器を噴射して暴れていました。真琴は高瀬を止めようと声をかけますが、逆上した高瀬から消火器を投げつけられてしまいます。千昭が即座に真琴をかばい、消火器を頭に受けそうになりますが、真琴は千昭のケガを防ぐためにタイムリープを使い、2人は避けることができました。しかし壁にぶつかってバウンドした消火器が友梨の背中に当たって、友梨がケガをします。この事件がきっかけで千昭と友梨はつき合うことになります。真琴は複雑な気持ちを抱き、内心面白くないのでした。

真琴は果穂の友人2人から、功介先輩とつきあっているのか、としつこく訊かれます。真琴は功介と果穂がつきあうように、告白当日までタイムリープして、2人が話し合うきっかけを作ります。うまくいったことに満足する真琴でしたが、功介からブレーキが故障している真琴の自転車を借りていく、というメールが来ます。慌てた真琴は事故を防ごうとすべく、通学路にある踏切へと向かいます。踏切に着いたところで、真琴は何事もなかったことを知って安心します。そのとき千昭から電話がかかってきます。告白の事件から千昭を避け続けていた真琴は、千昭と久しぶりに世間話ができたことに喜びます。すると千昭から「お前、タイムリープしてない?」と問われます。あせった真琴はタイムリープしてその会話をなかったことにしてしまいます。しかしその時点で、真琴のタイムリープの使用可能回数が終わってしまいます。

すると真琴の横を、ブレーキが壊れた真琴の自転車に乗った功介と果穂が走り去ります。真琴は2人を追いかけて転倒して大ケガをしながらも「止まれ」と連呼して泣き叫びますが、自転車は下り坂を暴走して遮断機の下りた踏切に突入してしまいます。真琴が目を開けると時間は止まっていて、目前には真琴の自転車を持った千昭が立っていました。困惑する真琴に千昭は、自分が未来から来た人間であり、クルミ型の装置でチャージしてタイムリープ能力を得ること、真琴のタイムリープ能力もそれであること、事故に遭って一度は死んだ功介たちを助けるために、自分の最後のタイムリープ能力を使ってしまったことを打ち明けます。千昭は「この時代の、この季節の、この場所」にしか存在を確認できない「ある絵(白梅ニ椿菊図)」を見るために、未来からやってきたのだと告げます。その絵は和子が修復中の作品でした。未来に帰れなくなった千昭は「タイムリープを過去の人間に知らせてはいけない」というルールを破ったからと、真琴たちの前から姿を消してしまいます。

千昭の「自主退学」の話題が学校中に広がる中、真琴は屋上でひとりで号泣します。落ち込む真琴に対して、和子は自分が高校時代に初めて好きになった男性のことを、今でもずっと待ち続けていると話し「真琴は違う。待ち合わせに遅れてきた人がいたら、走って迎えに行くのが真琴でしょ?」と励まします。その夜、真琴は左腕を見て、自分のタイムリープが、あと1度だけ可能になっていることに気づきます。千昭がタイムリープをしたために、真琴が最後のタイムリープを使う前に戻ったのでした。そのことに気づいた真琴は、未来に帰れなくなった千昭を助けるために、あの日の理科室へ、最後のタイムリープを使います。無事にあの日に戻った真琴は友梨に対して、自分は千昭が好きだと告げます。真琴の想いに気づいていた友梨は、真琴に千昭を追いかけるように言います。

真琴はいつものグラウンドへ行きます。待っていた千昭の手首に、タイムリープ能力が残っていることを確認した真琴は、タイムリープや未来の話は、もう聞いていると話します。真琴にすべてを話してしまったことを悔みながら、未来へ帰ることになった千昭。真琴は「あの絵」が未来でも必ず見られるようにすると約束します。別れ際になっても、素直な気持ちを伝えあうことができない2人は、最後まで憎まれ口を叩き合います。千昭が消えたあと真琴は大泣きしますが、戻ってきた千昭は真琴を引き寄せて「未来で待ってる」と言います。真琴は「すぐ行く。走ってく」と呟きます。

千昭は表向き、留学したことになっていました。自分には何も言わずに消えてしまった千昭に、功介は不満を述べますが、真琴は「やりたいことが決まったんだよ」と言い「私もこれからやること決まったんだ」と言います。
原作者の筒井康隆は「自転車のブレーキくらい直しておけよ」と言いつつ、原作を引き継いだ正当な作品だと評価しました。恋愛の起こる直前の寸止めの状態を丹念に描いていると思いました。とにかく千秋がカッコ良かったです。3人でのキャッチボールの様子が、会話の内容とかみ合っていて、凄いと感じました。和子が思い出話をするシーンで、和子と2人の男性が写っている写真にズームアップしていくところが、オリジナルの『時かけ』を彷彿させていて、感慨深かったです。真琴のタイムリープが、最初は後ろ向きだったのが、最後では前向きに変わっている点は、ポイントだと感じました。
千昭と真琴が2人きりで話す場所が、いつも荒川(隅田川?)の土手であることも、この作品の背景として活きていたと思います☆
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