映画「月光の囁き」を観て。高校の同級生の男女の、倒錯したSM的恋愛の顛末を描く
1999年製作。同名の漫画作品の実写化です。同じ剣道部に所属する高校生の日高拓也と北原紗月の、倒錯した恋愛の顛末を描いた作品です。ふたりはお互いに好意を持っていて、仲の良い友だちとしてつき合っていました。しかしある日、紗月が拓也の部屋の引き出しから、自分の写真やトイレの音を録音しているテープを発見します。それ以来、普通の恋人関係が変化して、マゾ的性癖を持つ拓也と、嫌悪しつつも離れられない紗月との、異常な関係が始まります。

映画の冒頭、日高拓也(水橋研二)と北原紗月(つぐみ)のふたりの剣道の朝練から始まります。拓也は紗月に「面を取られるのは好きだ。だらけた日常に活を入れられているようだ」と言います。紗月は「それやったら日高君それ変態や」と答えます。拓也は紗月のロッカーを開けて、ブルマーの匂いを思いっきり嗅ぎます。誰にも言えない、拓也だけの秘密でした。拓也は親友から、紗月宛のラブレターを託されます。拓也は放課後、紗月と待ち合わせして、そのことを話します。紗月は拓也に「ひょっとして、私のこと気にしている? わたし、日高君のことが好き。日高君は嫌いか?」と訊きます。拓也は「嫌いなわけない。俺が高校に入ってから剣道を始めたのは、北原がいたから。北原と一緒にいたい」と答えます。紗月は「なんでもっと早く言ってくれなかったの?」と訊き返します。拓也は「叶わぬ夢と思っていたから。傍にいるだけで良かった」と答えます。拓也は自分の部屋で、紗月のリップクリームを塗って「間接キス」をするのでした。ふたりは自転車で二人乗りしたり、図書室でキスしたりします。ある日、紗月は拓也の写真が欲しいと言い、拓也は証明写真を撮って渡します。拓也の自室の鍵付きの引き出しには、紗月の写真やリップクリームが入っていました。その夜、拓也は新しい自分に生まれ変わるために、それら紗月の分身たちを燃やします。夏が終わろうとしていました。

ある日、拓也が風邪で寝込みます。紗月が学校を抜け出して見舞いに来てくれます。紗月は拓也の汗を拭いてあげます。ふたりはキスをします。拓也は「風邪が移る」と言いますが、紗月は「かまへん」と言って、自分から服を脱ぎだします。ふたりは最初のセックスをします。しかし紗月が痛がったので、拓也は途中で止めます。紗月は「手握ろう」と言います。拓也は「これが幸せなんだ」と自分に言い聞かせますが、もうひとりの自分が「それはウソだ」と囁きます。紗月はトイレを借ります。拓也はトイレットペーパーを補充するフリをして、トイレに録音機を設置するのでした。拓也は紗月のローファーを眺めながら「何が違ったんだ。どこがいけなかったんだ。僕の見たい紗月の顔は・・・」と思います。そして「俺も三四郎(紗月が飼っている犬)になりたい!」と思います。紗月は拓也に「もう一度、部屋に行ってもいいか? 今度は大丈夫だと思う」と言います。

紗月が拓也の2階の部屋を訪れます。拓也は階下の母親に呼ばれます。紗月はこっそりコンドームを拓也のベッドにしまうと、自分のソックスを発見します。そして、机の鍵付きの引き出しの中を見てしまいます。そこには、自分の写真やカセットテープがありました。紗月はカセットープを聞いてしまいます。それは拓也が紗月の放尿する音を盗聴したものでした。紗月は驚いて「変態!帰る」と言って帰ってしまいます。拓也は自ら階段から落ちて「俺って変態や」と呟きます。紗月は剣道部の先輩の植松に近づきます。紗月は植松に「日高君とは別れました。植松先輩と大林さんのように、理想のカップルになりたかった」と話します。植松も大林と別れたところでした。翌朝の下足場、紗月の拓也に対する態度が、見下す視線に変わります。紗月は拓也に「あれから植松先輩とどうなったか聞かへんのか? 植松先輩とは今度の日曜日に映画見に行く約束をしている」と告げます。

紗月は三四郎の散歩に出かけますが、夕立に遭います。帰宅すると拓也が紗月の部屋に居ました。姉が通したのでした。紗月は拓也を「私の部屋でなにしよるん! 今度は何を取りに来たんか?」と言って追い出します。夕立の中、紗月はソックスを田んぼに投げ捨てます。拓也はそれを拾います。拓也は「嫉妬やない。紗月がいなくても毎週来てた。紗月と同じ空気を吸って、同じ景色を見れればいい。俺はさつきの犬や」と言います。紗月は雨の中、植松先輩に会いに行きます。途中に拓也がいました。拓也は「紗月が自分でソックスをくれた」と言います。拓也は勃起していました。紗月は「酷すぎる。私はもっと大切な者を、あんたにあげたはずや。もうええ、あんた犬なんやろ、人間の気持ちなんてわからない。あんたに犬らしい仕事をあげる。私と植松先輩のデートを見守って。犬やけん、嫉妬せんのやろ」と吐き捨てます 拓也は雨の中、ふたりがデートする様子をじっと見つめます。

喫茶店で紗月は植松先輩に「これはデートか?」と訊かれます。紗月は「日高君とは別れた。そのつもりです」と答えます。紗月はトイレに行きます。そこには拓也がいました。拓也は笑います。紗月は拓也にビンタします。拓也は紗月に「紗月は誰にも見せられない自分を知ってくれている。急に楽になった」と言います。紗月は「勝手すぎる。あんなん聞かされて、わたしはどうしたらいい? 帰って」と言います。拓也は「今度は自分の好きでおる」と答えます。紗月は拓也に「帰れ」と命令します。拓也は「イヤじゃ」と答えます。紗月は「なんでや。犬は主人の云うこと聞くのと違うんか?」と言いますが、拓也は「犬が命令訊くのは、主人と一緒に居たいから。散歩の途中で帰れいうて、三四郎が帰るか?」と返します。紗月は拓也に別のお願いをします。欲しい本を買ってきて欲しいと・・・。紗月は夜遅く、三四郎を散歩に連れて行きます。すると拓也が本を持ってきます。紗月は本を投げて、拓也の手を足で踏みます。紗月は「なんでそこまでする。気持ち悪い。痛いか?」と訊きます。拓也は「痛くない」と答えます。紗月は「そこまでしていったい何がのぞみや?」と問うと、拓也は紗月の汚れた足を舐め始めます。紗月は「なにしんの へんたい!」と叫びます。

ある日拓也は、植松先輩に呼び止められます。植松は拓也に「紗月と別れたのはほんまか」と問います。拓也は「紗月が言ったんならほんま」と答えます。植松はその言い方が気になるのでした。紗月と植松はセックスします。紗月は橋の上で涙を流します。そこに拓也がやってきます。紗月は拓也に「勝手に涙出てくる。あんた今晩うちに来てくれへんか?」と言います。その晩、拓也は紗月の部屋の押し入れに入れられます。拓也は「何が始まるんや?」と訊きますが、紗月は「あんた、わたしのためやったらどんなことでもできるんやろ。いまから本当かどうか試す。物音立てずにじっとしていろ。1時間か2時間。少しでも音を立てたら、こんどこそ絶交や」と言います。紗月と植松はセックスをします。植松が帰った後、押し入れのふすまが開けられます。拓也は紗月に「わかってくれるか? 許してくれるか?」と言い、その場でオナニーしようとします。紗月は激怒して泣きます。足で押して「へんたい! あんたはいつも自分のことばっかり。わたしのことなどどうでもええんや。被害者面して」と叫びます。拓也は「ちがう。俺も失っている。嫉妬しないのはウソや。傷ついている。傷だらけや。だから代わりの物を必死に探し出す。紗月が他の男に抱かれても、そこに自分の知らない紗月が居れば知りたい」と答えます。紗月は「普通に付き合っていたほうが、もっと何倍も知れたと思わないのか」と泣きます。紗月は「またひとつ気づいたわ! あんたのその顔見てたら気持ち良くなってきた」と言って、サド感情が芽生えるのでした「もっともっと泣かしたる。そしてもっともっと気持ちようさせてもらうわ!」と言います。
紗月と植松は物置でセックスします。拓也は衝立の裏からそれを見ます。拓也は全身ロープで拘束されているのでした。植松が帰ります。紗月は拓也に「汗かいたわ。キレイにして」と言います。拓也は紗月の汗だくの足を舐めます。紗月は「恥ずかしくないのか。そんなに愛しとるんか? こんなことしてもまだ好きか? 気持ちええんか?」と訊きます。紗月は「やっぱり植松先輩がいい。拓也は変態だから」と言います。植松は「東京の大学には行かない。最初から紗月が好きだった」と電話で言います。紗月は悩みます。紗月は結婚して出ていく姉から「本当に好きなのは日高君やろ」と言われます。紗月は「姉ちゃんには関係ない。自分で決める!」と言います。

紗月はひとりで電車に乗って、川上温泉へ出かけます。紗月は植松を呼び出します。植松が温泉に着くと、なぜか拓也が居ました。紗月と植松と拓也は、3人で滝に行きます。紗月は「足が汚れた!」と言って拓也に舐めさせます。植松は怒ります。紗月は「自分でもわからんのや」と泣きます。「植松先輩助けて。私は植松先輩だけ。植松先輩と普通に付き合いたい。でもあいつ(拓也)がそうさせてくれない。別れたいのに別れさせてくれない」と言って、拓也を木の棒で殴りつけます。紗月は「うれしゅうて喜んどるのや」と狂乱して泣きます。紗月は「死んでやろうかと思った。でもなんで死ななあかん。なにした。いまわかった。あんた死ね。飛び降りろ。そうすればすべて上手く行く」と拓也に言います。拓也は「本気か?」と訊きます。紗月は「本気や」と答えます。拓也は「そうする。でもひとつだけ頼みがある。俺のこと死ぬまで忘れんといて」と言って、滝の上から飛び降ります。植松は「いったいこれはなんや。ふたりして俺を諦めさせる芝居か」と言います。誰も本当のことを話そうとしませんでした。紗月と拓也だけが温泉に行って、拓也が滝に飛びこんだ、ということになります。
拓也は一命を取り留めます。病院のベッドに、紗月が見舞いに来ます。なずか右目に眼帯を付けているのでした。紗月は拓也に「のどが渇いた。コーラがいい」と言います。脚を折っている拓也は松葉杖を使って、自販機に買いに行きます。すると「ジンジャーエールがええ」と言われます。ふたりは土手に並んで座ります。紗月は「虫に刺された」と言います。紗月は拓也に「ギブス取れたら海でもいこか」と言います。

私は2回観ました。最初は拓也に感情移入して、2回目は紗月に感情移入しました。私もどちらかと言うと「マゾ気質」なので、拓也の気持ちが良く分かりました。物語の最初は、普通の爽やかな青春の日常がギターの旋律に乗って繰り広げられますが、開始から30分くらいで、耽美的で倒錯の匂いがして、ゾクゾクしてきました。とにかく北原紗月役のつぐみさんが妖艶で、妖しい魅力満載でした。目力(目つき)が尋常ではなかったです。マゾ的性嗜好を持つ拓也と、それに嫌悪しつつも離れられない紗月との異様な関係。紗月は拓也を嫌うほど、いじめるほど、マゾヒストの拓也は紗月への想いを強くしていく展開は、SMの本質を垣間見ているようでした。SMは一見、ご主人様が主導権を握っているように見えますが、実際はM側がご主人様を操っていることが多いです。
一見アブノーマルな作品に見えますが、根本ではとても純粋な純愛映画だと思います。思春期の恋愛のひりひりと痛い感じと、身勝手な不器用さが同居していて、けだし傑作だと思っています。
佐原市(現・香取市)の風景が古風で素敵でした。ちなみに作家の綿矢りささんが、この映画を好きな作品に挙げています☆
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