書評 「東京島」(桐野夏生 著)☆無人島をサバイバルする女性の、創世記の物語☆


 1945年から1950年にかけて、マリアナ諸島のアナタハン島で起きた「アナタハンの女王事件」をモチーフに創作された作品です。「新潮」にて、2004年1月号から2007年11月号まで、断続的に計15回連載され、2008年に刊行されました。第44回谷崎潤一郎賞を受賞しています。のちに映画化されました。無人島での極限サバイバル生活を描いた、エンタテインメント作品です。

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結婚20周年を迎えた林清子と夫の隆は、クルーザーで世界一周旅行に旅立ちます。しかし出発からわずか3日目に嵐に遭い、どことも知れぬ無人島に漂着します。清子たちは、何とかしてこの島を脱出しようと試みます。それから間もなく、与那国島での過酷なアルバイトに耐えかね、島からの脱出を図った23人の若者たちが途中で台風に遭い、島に漂着します。さらには、日本への密航途中で金銭トラブルに発展した11人の中国人(のちにホンコンと名付ける)たちが島に置きざりにされます。無人島に流れ着いた35人の男たちと1人の女。やがて「トウキョウ島」と呼ばれるようになった無人島での奇妙な暮らしが始まります。この島の唯一の女性である清子は46歳で最年長。「白豚」と揶揄されるような太った体格です。20代から30代までの間に3度の流産を経験しています。無人島は、縦が7キロ、横が4キロ程度の「潰れた腎臓」の形をしているのでした。毒蛇や山猫など危険な動物は生息せず、野生のバナナやタロイモが豊富に採れて、椰子も大量に生えているので、食物には恵まれた島でした。

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ひねくれた性格で共同作業に非協力的なワタナベが「オダイバ」の反対側の「トーカイムラ」という浜に追いやられます。そこは、謎のドラム缶が大量に放置されている場所でした。ドラム缶は放射性廃棄物だという噂が立っていました。唯一の女性である清子は、性を武器に男たちの上に君臨します。清子に貢ぎ物をして気に入られようとする男たち。清子は若者たちとセックスに興じます。

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隆は次第に胃腸の弱さで食中毒を発症し3か月の衰弱ののち「サイナラ岬」で転落死します。夫を亡くした清子は、若い男たちの中でも最も強いカスカベの妻となります。カスカベは、清子にまとわりつく男たちを敵視し、暴政を行っていましたが、ある日、崖から転落して死んでしまいます。清子はたいそう悲しみますが、次の清子の夫はくじ引きで決めることになり、引き当てたのはみんなから「GM(本名は森軍司)」と呼ばれる、記憶を失った男でした。GMはやさしい男で、風貌が竹野内豊に似ていることから清子からはユタカと呼ばれます。後に「記憶を取り戻した」ことで発奮し、周囲にリーダーシップを発揮するようになります。ほかにメンバーには「ジュク(酒造りの村)」のダクタリ、「シブヤ(服や装飾品作り)」のオラガ、犬吉(いぬきち)とシンちゃん(ホモカップル)、カメちゃん、シマダ、ヒキメ、「ブクロ(島の自警団)」のアタマ、ジェイソン、「トーカイムラ」のワタナベ、「スターハウス寺院(鍾乳洞)」のマンタ(多重人格障害)がいました。

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ホンコン(中国人グループ)が、保存食や生きるための技術を次々と開発するなど、自分たちよりも進んだ生活をしているのを見た清子は、日本人が頼りなく思えてきます。清子はホンコンのリーダー・ヤンの女となることで、イカダに乗せてもらい島を脱出しますが、イカダは座礁します。結局脱出は失敗し、島に戻らざるを得なくなった清子は、ワタナベやGMなど日本人たちに裏切り者のレッテルを貼られ、ひどい扱いを受けるようになります。日本人のリーダーとして君臨していたGMから、清子は冷たく遇されます。以前とは全く違うGMの姿に恐れを感じ、絶望する清子でしたが、やがて自分が妊娠していることを知ります。清子はGMの子供であることを主張したことで、再び島の女王として君臨するようになります。

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お腹が大きくなるにつれて、より安全な出産の場所を求めて「サイナラ岬」近くに住み始めたホンコンたちのところへ向かうと、なぜかフィリピン人の若い女性たちがいました。台湾に出稼ぎに向かう途中で遭難した女性たちは、ボートが修理できればすぐに島を出ていくと言います。そこで「子供の父親はヤンだ」と言い、清子は、再びホンコンたちと一緒に過ごすことにしました。そして産気づいた清子は、フィリピン女性の中で出産経験もあるマリア助けてもらい、無事に双子を出産します。双子の子供たちはチキ(宮武祭)とチータ(宮武祭)と名付けられます。島を早く脱出したい清子ですが、ボートは小さく、修理ができたとしても全員は乗れません。子供を残して自分だけボートに乗るのか、島に残るか、清子は迷います。その頃、助けが来るのを諦めた日本人たちは、この島で暮らすことを決意します。清子はボートに乗り、彼女らと島を脱出しようとしますが、再び清子の裏切りを知って怒った日本人の男たちに襲われます。双子のうちの1人・チータを奪われてしまったもののGMに助けられ、清子は双子のもう1人・チキとマリアと一緒に、東京島を脱出することに成功します。10年後、東京島は残された者たちで繁栄し、まとまった1つの国となり、チータは東京島の王子となっていました。そして日本に戻った清子は、10歳のチキに東京島での話をするのでした。

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蛇の皮を剥ぎ、その肉を食べるようなサバイバル能力を身に付ける清子の生命力に感動します。生き残るためなら、どんな手段を使っても生き残ろうとする女性のしたたかさとたくましさには感服します。「東京島」と名づけられた小宇宙に産み落とされた、新たな創世記の物語です☆

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