映画「ヴァイブレータ」を観て。長距離トラック運転手と、アルコール依存症の女性の行きずりの恋
2003年公開。赤坂真理の同名小説の映画化です。寺島しのぶの映画初主演作で、フリーの長距離トラック運転手と、アルコール依存症(精神疾患ぎみ)のフリーの女性ルポライターとの、東京から新潟間の往復のロードムービーです。登場人物は2人だけで、夜中の雪の日のコンビニでの出会いから物語は始まります。

主人公は自分の頭の中に氾濫する声(幻聴)に悩まされ、不眠や過食、食べ吐き(過食嘔吐)を繰り返して、かろうじて自分を支えている、アルコール依存症の31歳のルポライター・早川玲(寺島しのぶ)です。ある雪の夜、いつも行くコンビニで、ひとりの若い男に目を留めます。ゴム長靴を履いたいい感じの男。匂いもいい。彼女は「彼を食べたい」と言う直感に従い、その男のトラックに乗りこみ、旅路の道連れとなり、行きずりの関係を結びます。男は岡部希寿と言う26歳のフリーの長距離トラック運転手でした。翌朝、そのまま岡部のトラックに揺られて、次の仕事先である新潟へと同行した玲は、彼と言葉や肌を重ねながら徐々に心が癒されていくのでした。気づくと、頭の中の声も聞こえなくなっていました。4日間の旅(東京と新潟の往復、約1000キロ)が終わりに近づこうとしていました。玲が岡部からトラックの運転を教えてもらう場面で、物語はラストを迎えます。玲は「彼を食べて、彼に食べられた。ただ、それだけのことだった」と思いながらも、自分が”いいもの“になった気がしていました。東京の元のコンビニに帰った玲は、幻聴も消えていました。

タイトルの「ウァイブレータ」とは、携帯電話の振動や、トラックのエンジンのアイドリングのことのようです。食べ吐き(過食嘔吐)のシーンがいっぱい出てきたり、電話で会話しながらおしっこをするシーンがあったり、キスやセックスの描写が激しかったり(寺島しのぶはオールヌード)、オナニーシーンや喫煙シーンがあったりしますが、不思議と嫌悪感が湧きませんでした。終始、玲の頭の中のモノローグ(独り言)が、黒地に白い文字で縦書きに出てくるカットで描写されます。全般的にロードムービーを見ているようで楽しめました。旅の途中、岡部が他のトラックと無線でやりとりする場面や、玲と岡部の会話がテンポ良く、飽きませんでした。

玲(寺島しのぶ)の美人ではないが色気のある存在感と演技の凄味(迫力)が圧倒的でした。また岡部(大森南朋)の色気とカッコよさと優しさ(元不良で元ヤクザ)に魅了されました。玲は食べ吐きは3度美味しいと言います。「食べて美味しく、吐いて痩せて、ぐっすり眠れる」。トラックの車内のシーンと走っているトラックを外から撮影しているシーンがほとんどですが、おしまいのほう、食堂で食べながら2人が会話を交わす長いシーンも良かったです。

無線の知識やトラック運転手同士の独特の文化(隠語)が頻繁に出てきたり(大抵は岡部の、脚本があるとは思えない自然な長セリフ)、数々の挿入歌(洋楽・邦楽)がかかったり、玲が「気持ち悪い」と言って上手く吐けない自分に自暴自棄になって自分を殴るシーンは圧巻でした。
とても癒される映画でした。ずっと雪の中を走っている風景が、印象に残りました☆



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